ひまわりBちゃんのよもやま話

小さい島で生まれて、今は九州本土(長崎)で暮らしています。寅年の還暦女です。母で、妻で、嫁で、現役助産師『ひまわりBちゃん』の日々の出来事を綴ります。共感していただけたら幸いです。

禁煙外来④最終話

おはようございます。

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短編のお話を書いてみました。

ご笑覧いただけましたら幸いです。

禁煙外来④

「ヤブ医者が!!!」

 

彼は叫んだ。衝動に乗せて医者の横面を拳で殴り倒し、飛びかかって椅子から引きずり下ろした。看護師が慌てて大声で誰かを呼ぶ。もう彼は自分を止められなかった。

殴りに殴り蹴りに蹴り、医者の頭や体を踏み潰した。こんなんじゃ足りねえ、もっと、もっとだ。俺の怒りを味わえ。

自分の惨めさに悔め。

 

「化け物め!地獄へ堕ちろ!!!」

 

床に倒れて血まみれで呻く医者を罵り、彼は目を血走らせながらその医者の太った首を絞め上げた。

借金の取り立てに追われる生活だって、こんなに苦しくはなかった。薬もギャンブルも酒も女も辞めた。それに追随する苦しみや憤りを、誰が分かってくれる?分かるはずない。

机の上の落書きだらけのカルテを破り捨て、ペン立てやオーディオ、机上にあるすべてを薙ぎ払い、叫び散らしながら暴れた。

彼の記憶はそこでプツリと途切れている。

 

 

気づけば見知らぬ場所にいた。両手両足を拘束され、彼はベッドに横たわっていた。看護師らしき人間が彼の両目に懐中電灯の光を当てた。

 

「拘束を解いてください」

 

言うと、看護師は「もう少し安静にしてからですね」と述べた。

看護師が出ていくと、次に警察が来た。警察は彼に、医者は外的な怪我はあるが、意識はあり無事であること、そして彼が傷害罪で逮捕されることを伝えた。

 

そして誰かを呼んだ。

呼ばれた誰かが、カーテンを開きおずおずと入ってきた。

 

それは彼の娘だった。

 

5年前に離婚した妻との間に生まれた、彼の、たった一人の、愛する娘だった。

彼が依存していたすべてを辞め、健全に生きていくならば、会わせてくれるというのが、元妻との約束だった。

 

「パパ」

 

涙が止まらなかった。

ああ、俺はこの瞬間のために頑張ってきたんだ。

健全になるために。5年もかけて。

つらかった。苦しかった。

人生なんかどこまでも真っ暗だと思った。でも耐えた。

この子のために。そう誓ったのだ。


名前を呼ぶと頷き、泣きながら微笑んでくれる。

優しい子に育ってくれたんだな。

それが、どうしようもなく嬉しかった。


ようやく我に帰る。

オレは………

深い闇の中に微かにゆらめく、たった一つの灯火を握りつぶしてしまったのか。

自分の手で。


「もう一度だけチャンスをあげる」

娘の後ろから聞こえたのは懐かしい元妻の声。

 

毎月はじめに届いていた、彼と社会を繋ぐ唯一の細い糸。

彼の元妻と娘の、小さな祈り。


刑務所を出たら、真っ当に生きよう。

元妻への借を返そう。5年分の大きな借を。

 

そしてもう一度、人生をやり直そう。

今度こそ。

 

ぼろぼろの肺で、彼はそう思った。


(おしまい。禁煙外来@ちょっと実話混じりでした。)

お読みいただきありがとうございました。

明日もいい日になぁ〜れ😊。

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